光の御柱 ☽︎︎.*·̩͙…7
行者は 村を散歩しながら
この村の事で
疑問に思っていた事を御巫に聞きました
御巫様
山で迷い 難儀をしている時に
清らかな光に導かれ この地に参ったのですが
ここには鳥居も社も無いのですね
御巫は行者の方を向き
笑顔で話そうとしましたが
言葉に詰まり 声にはなりませんでした
御巫は 黙って頭を下げ
人気の無い森に消えて行きました
行者は
御巫の身体からあふれ出す
言い様のない慟哭の波に
胸が張り裂けそうになりました
それを見ていた村長(むらおさ)は
御巫の住まう庵へ 行者を連れて行き
話し始めました
この村は
御巫様の御父上がつくられた村でしてな
この辺りは 特に戦火が激しく
その当時 城主であった御巫様の御父上は
城を焼討ちから守る為に
闘いの神でもある 火の神を御祭りになった
その後 戦は終わったが
殿様は 焼け野原となった城下に平伏して嘆き
「自然を壊し 村を壊し 城下の者を守れずして
己だけが名誉を得たとて 何になろうか 」
と 世を捨て 城を捨て
生き残った者達と この地に立たれたのじゃ
戦で命を失った者達の魂を弔うのは
吾が一族のつとめである と・・・
村長は 目頭を押さえ
その続きを 語る事ができなくなりました
けれども その想いの丈は
行者の心の中に 流れ込んで行きました
殿様の目の前で 命を落とされた 奥方様の姿
寝食を忘れ 唯 一心に祈る殿様の姿
身罷られ 横たわる殿様に泣き縋る幼い童女の姿
村人皆で木材を集め 庵をつくる光景
嗚呼 だから・・・
家人を想い 臣下の者を想い 村の民を想い
必死に守ろうとして 守り切れなかった殿様
殿様を信じ 全てを捨て 終生を捧げた臣下の者達
戦で命を失った数多の人々の想いを
抱き参らせる為に御巫になった童女
庵の床の間に奉られた 火産霊神を拝む 村人達
この地にあふれる清らかな光は
神人達の放つ 限り無き慈しみの想いに応え
神々が降ろされた 光の御柱だったのですね
神人達の里より
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